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第1章 今すぐ撃って

　七畳半の小さな部屋の中、黒木のベッドに勢いよく寝転がった女が唇を舐めて窓を仰ぐ。
　夕刻の赤く染まった光に顔を濡らしながら、手元に包んだ銀色のものを持ち上げていく。
　豊満な胸にその冷たい側面を押し当て、グリップを大事そうに一本ずつ指で包む。
　唇をマズルで撫で、赤い舌で先端をつつくように舐める。
　装填済みのシリンダーに爪を立て、飲み込むように銃身を咥える。
「ん……っ」
　唾液を胸に滴らせながら、丁寧に舐め上げていく。
　勃起した男性器のようなシルエットが床に映り、それを咥えた自身の影に心拍が早まる。
　カチリ。
　引き金を引いて、ゆっくりと喉元まで埋めていく。
　嗚咽が込み上げるが、飲み下して涙を目尻から垂らす。
　ああ、今日も元気ね。
　グポ、と音を立てて口を離すと、それをショートパンツの端から中に押し入れる。
　濡れたマズルが少しずつ膣に入っていく。
「あ、ああ……ん」
　カリのように突き出たフロントサイトが肉壁を引っ掻く。
「はあっ、あっく」
　ズグリと一気に差し込んだ瞬間、全身が痙攣した。
　危うくトリガーに当てた人差し指が曲がりかけたが、必死に耐える。
　まだ……
　まだ、放っちゃだめなんだから。
　金属の硬い感触に中を収縮させても圧迫感が押し寄せる。
　その形を刻むように身体をくねらせ、快感に浸った。
　ぞくぞくとせり上がってくる波に抗うように小指を噛む。
「ふうｯｯ、んんあ……まだっ、あっ」
　音を立てながらスライドを繰り返す。
　決して萎えることの無い男根。
　彼女にとってその銃はセックスフレンドそのものだった。
　毎晩慰みに使われる銃身には、流しても落ちぬほど彼女の愛液が染み込んでいる。
　たった、一瞬。
　その指を引いてしまえば、身体を弾丸に貫かれるスリルに脳まで痺れる。
　どんなアダルトグッズよりも過激なこのスタイルから彼女はもう離れることが出来なくなってしまっていた。

　太陽が沈み、暗くなった部屋で一心に銃を舐める。
　一滴も零さないようにと。
　使った後の掃除まで、彼女には快感の延長だった。
「ん……んむ」
　ぴちゃぴちゃと。
　ふやけた指も構わず、銀色のそれを愛しそうに綺麗にする。
　それが終わると、ゴトリとそれをベッドから降ろし、シャワー室に向かった。
　無造作に凶器を置いたまま。