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第10章 不協和音

「訳わかんねぇよ…」

有紗には雄二の目が軽蔑してるように見えた。

「ごめんなさい…さようなら…」

その目を有紗はこれ以上受け止める続けることが出来ず、逃げるようにその場を去った。

繁華街に消えていく有紗を呆然と見ていた…


何がどうなっているのか、理解できなかった。

前々から士郎さんが、自分と同じように有紗へ想いを寄せていることはわかっていた。

だからこそ有紗をあんな目に合わせた事が理解できなかったし、昔はヤンチャしていたらしいが、今は仕事に真面目な士郎がすることとは普段の姿からは想像もできないことだった。

仕事に対する姿勢は雄二からも尊敬に値するものだった。

もしかすると、今の自分のように嫉妬にかられて酒に酔い、狂気にふれたのかもしれない。


瞼を閉じると、目に涙を溜めて走り去る有紗が焼き付いていた…


溢れだす有紗への想いが、雄二を突き動かした。

このままじゃいけない、と…


自然と、有紗の消えていった方へ身体が駆け出していた。