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crazy night
第10章 不協和音
有紗は、自分がどこへ向かっているのかわからなかった…

とにかくあの場から、いつも優しい雄二の冷たい目から逃げたかった…

逃げたかった…?
あれ、もう逃げないって決めたんじゃなかったっけ

「はは…また逃げてるんだ、私…」
自分で自分を嘲笑ってしまう。
何が少し強くなっただ。



賑わう繁華街の彩りはまた澱んで、自分の心を写しているようだった。

目の前の横断歩道が赤になり、立ち止まる。
膝はガクガク震え、足がすくみそうになるのを抑え、立っているのが精一杯だった。


すうっと鼻から息を吸い、呼吸を整えようとする…花の香りがした。
手には雄二に買ってもらったブーケが握られたままになっていた。
楽しかった数時間を思い出し、涙がまた溢れ出しそうになる…



「すいませーん!お姉さん、ちょっと良いっすか!?」

なんだかどこかで聞いたことのある声だ…
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