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王女様の不埒な暴走
第6章 王太子の提案



 ──ライラがリンゼイを起こす一時間ほど前。


 朝早くから普段通りの仕事をこなしていたジョシュアは、ライラを呼び止める。


「ライラ。リンゼイ様は本日学校を休まれる。モーニングティーを運ぶ時間は、一時間ほどあとがいいだろう」


 昨夜の無体のせいで、リンゼイはまともに動ける身体でないだろうとの気遣いから、そう指示を出す。


 ジョシュアも不眠だが、周りに気取られない悠然さで振る舞う。


「わかりました。ではそのように致します」


 一揖してライラが他の仕事に行ったあと、ジョシュアはレオナルドの部屋へモーニングティーを持って向かった。


 精緻〈セイチ〉な紋様が彫られる重厚な扉を二度ノックする。


「失礼いたします」


 ジョシュアは金の取っ手を捻り、部屋の中へと入った。


 一国の王太子の部屋なだけあり、国王と王妃に次ぐ広さを誇る室内。


 高い天井には眩いシャンデリアが吊り下げられ、繊細な模様が施された壁紙が壁一面に貼られる。応接セットの長椅子は濃赤のビロードが背凭れに張られたもので、大理石の机は金で縁取られている。


 眼も眩むような豪華な部屋の主を起こすべく、ジョシュアは寝室に続く扉を再度ノックした。





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