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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「でもなぜ生き別れなんかに……?」
「それは……」
ジョシュアは己の手を手で握る。
「リンゼイ様は没落した貴族が、どのような命運を辿るかご存じですか」
“没落貴族”──その言葉を聞き、まず浮かんだのは飢餓に苦しみ、命を絶つ者たちのことだ。
中には働き場所を探し、平民として暮らしていく者もいるそうだが、ほとんどの没落貴族たちは矜持を捨てきれず働くのを拒み、飢えか自決で命を落とすそうだ。
「まさか……ジョシュアさんやキャンディス様は、その没落した貴族の出だとおっしゃるんですか?」
リンゼイは驚愕に満ち満ちた眼でジョシュアを見た。
「ご想像の通りでございます」
なんということだろう! 彼がそのような重たい過去を背負っていただなんて、夢にも思わなかった。
リンゼイは口を手で覆い、呆然とする。
「……すべてお話します。少々長くなりますので、こちらにお掛けください」
ジョシュアは呆然とするリンゼイを椅子に座らせ、そして己の過去を語る。
想像よりもずっと悲惨な過去を──。
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