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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密





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 ジョシュアはクラーク伯爵家嫡男としてこの世に生まれ落ちた。


 だが伯爵とは名ばかりで、ジョシュアが生まれた頃には既に家は困窮しており、領民からの税でなんとか食べていけるほど。


 その最たる原因は、父の商才のなさにあった。


 父は事業を興してはことごとく失敗し、それでもめげずに事業を興し、また失敗を繰り返していたのだ。


 ジョシュアが5歳になった頃には借金返済のため、少しずつ売り払っていた領地が当初の半分ほどになり、さらに8歳になる頃には3分の1にまで縮小されてしまっていた。





「父上。私が借金をしている男爵家に働きに行きます。その給金を少しでも借金の返済に充ててください」


「ジョシュア……。気持ちは有り難いが、幼いお前に苦労させるわけにはいかないよ。次の事業は上手くいきそうなんだ。だからお前は余計な心配はしなくていい」


「そうよ、ジョシュア。あなたに今必要なのは、お父さまの跡を継ぐ勉強よ」


 両親はそうは言うが、ジョシュアは父の事業はまた失敗する予感があった。それにだ。


「ですが母上のお腹には私の弟か妹がいるのでしょう? 私が働きに出れば、私の分の食事を母上が召し上がれます」


 そう、母の腹には新しい命が宿っていた。だがその日食べるものにも困るようになってきており、このままでは腹の子が無事に育たない。両親だってそれは解っているはずだ。





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