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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
ジョシュアはレオナルドの自室の扉を叩く。すぐに返事が返ってきて、中へ招き入れられた。
待ち構えていたかのように、レオナルドは椅子に悠然と座っている。そしてジョシュアの手に眼を留め、微笑んだ。
「気持ちは固まったみたいだな」
「……レオ様もお人が悪い。こうなるといつから予想されていたんですか」
リンゼイをジョシュアの部屋に寄越したときなのか、それともジョシュアがリンゼイを抱いたと報告したときか。もしくはリンゼイ付きにしたときか。
その返答は肩を竦めて誤魔化される。
「ここに手紙を用意してある。あとは送るだけだ。返事が来たら一度一緒に逢いに行こう。いいな」
「宜しくお願いいたします」
ジョシュアは深々と頭を下げた。まだどうなるかは解らないが、リンゼイを手に入れるためにやれるだけのことはやろうと誓う。
「ああ。あとな、俺は私邸に戻ることにした。お前はここで王女の世話を引き続き頼むぞ」
「私邸にですか?」
「なんだ、いけないのか? まさかお前だけいい思いをして俺にはダメだと言うつもりじゃないだろうな」
なるほど、レオナルドは恋人のアリエッタが恋しいだけかと苦笑する。
「いいえ。そのようなことはございませんが、私の身の振り方が決まるまでは私はレオ様の執事です。私の眼が届かないからといって、あまり"オイタ"が過ぎませぬように」
「はいはい。早くこの口うるさい奴を追い出したいもんだ」
軽口を叩きつつ、二人して笑い合う。それは僅かに漂う寂しさを笑い飛ばすためだったのは、互いに同じ気持ちだった。
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