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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり




 王家の矜持を傷付けるからと、人前──それも客人の前で子供らしく泣くのも許されず、リンゼイは行き場のない寂しさと悲しみをそっとドレスを握りしめ耐えていた。


 もう二度と逢えないかもしれない、初めて好きになったジョシュアの麗しい姿をその眼に刻みながら。


 黄金に輝く髪も、広い空よりも濃く、深い海よりも神秘的なサファイアの瞳も、女性と見紛う白皙の肌も、すらりと伸びる手足も、見上げるほどの長躯な立ち姿も、凛々しく精悍な面持ちも、手袋に隠された長い指も、リンゼイに微笑みかけた笑顔や低く色香のある声も。


 どれもリンゼイの心を震わせ、締め付ける。


 恋というのはするものではなく、落ちるものなのだと彼が教えてくれた。


 恋というのは楽しいだけじゃなく、切なくなるのだとも教えてくれた。


 王たちが馬車へ乗り込み、続いて家令、そしてジョシュアも乗り込んでいく。


 乗り込む間際、一瞬だけサファイアの瞳がリンゼイを捉え微かに微笑まれた気がし、また泣きたくなる。


(ジョシュアさん……。どうかお元気で……)






 リンゼイの初恋は想いを告げることなく、ただただその胸に仕舞いこみ。


 だが想いは消えることも薄れることもなく、数年の月日が流れた。









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