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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
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瞬く光が一瞬であるように、楽しい時というのはあっという間だ。
王を伴ったラインハルトの視察団が国へ帰ることになったのだ。もちろんジョシュアも──。
「大変有意義な時間が過ごせました。今度はぜひ我が国へいらしてください。国をあげて歓迎いたしますぞ」
城の正面玄関でラインハルト国王が父に礼を述べ、意気投合した双方の王妃が手を取り合って別れを惜しみ、兄とレオナルドは固く手を握り合う。
その後ろに控えるリンゼイは姉と並び、開け放たれた扉の外に整列するラインハルト従者の中にいるジョシュアを、人のすき間から泣きそうになりながら見つめた。
彼が帰ってしまうのは最初から決まっていたことだ。どうしようもないと理解していても、こんなにも離れがたい。
せめてお別れくらいは言いたいのに、王女という立場がそれを邪魔をする。
リンゼイはあの日、ジョシュアと庭で刺繍をして以来、彼と話すことも叶わないのだ。
のんびりとカンターヌを観光する暇もなく、忙しくしているレオナルドの傍に常に従い、偶然城で会う機会さえなかったのだから。
昨夜催された送迎パーティーでもリンゼイの傍には父母がいて、厳格な父母の前では容易に執事である彼に話しかけられなかった。
もしそうしたなら、罰せられるのは彼だと知っていたから。
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