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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る




「お待たせいたしました。……リンゼイ様? なにを泣いておられるんですか」


 眼を赤くして立ち尽くすリンゼイにジョシュアは驚いた様子で傍らに立つ。


「ごめんなさい……。私……ジョシュアさんを不快にするようなことばかり言ってしまって……」


「は? ああ、私が突然出て行ったので驚かれたんですね。申し訳ありません。説明する時間が惜しかったもので」


「どういうことですか」


 リンゼイは鼻を小さくすすり上げてジョシュアを見上げると、彼に怒っている様子はなかった。


「入浴の準備をしておりました」


 入浴? こんな昼間から?


 訝しげに首を傾げるリンゼイの身体がふわりと浮いた。ジョシュアが抱き上げたのだ。


「お部屋までお運びすることをお赦しください」


「え? え?」


 ジョシュアの腕に抱かれ、景色が足早に去っていく様に、リンゼイは訳も解らず狼狽える。濃紺の絨毯が引き詰められる廊下を進み、曲線を描く階段を昇り、ジョシュアは二階の部屋にリンゼイを運ぶと、奥にある浴室に連れて行ってしまう。


「汗をかかれたでしょう? 私がお手伝いいたします」


 ジョシュアは入浴の手伝いをする宣言をすると、リンゼイをおろし、背中で結ばれるドレスのリボンを解き始めてしまった。





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