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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る



 残されたリンゼイは呆然と暫く立ち尽くしていた。


 ジョシュアに男心が解っていないと叱られたばかりで、またつい余計なことを口走ってしまった。だから怒らせたのだろうか。最初はそう思ったものの、別の考えも浮かぶ。


 彼といつか家族になり、子供をもうけて仲良くくらしていく夢を描いた。けれどそれはリンゼイだけだったのかもしれない。


 ジョシュアはリンゼイに愛してると言ってくれたし、爵位を得るために動いてもいる。それはリンゼイと結ばれるためだと思っていたが、違うのだろうか。


 カンターヌでは一度情を交わした男女は結婚するのが当たり前で、リンゼイもそれが当然と思い込んできたが、ジョシュアはラインハルトの育ちだ。男女が契っても恋人止まりで終わることもあるのだとか。


 ならばジョシュアもリンゼイと未来のことまでは考えていないのかも……。爵位を得るのも、簡単に首を跳ねられない立場になるがためかもしれない。


 特別な場所に連れて来てもらえ、自分が特別な存在になったのだと勘違いし、ジョシュアの負担になるようなことを言ったリンゼイのことを嫌になったのではと、悪い考えばかりが浮かんできて、リンゼイはドレスのスカートを握り、その双眸に涙を溜めたときだった。





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