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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




 ジョシュアの父が所有していた別邸で二日間過ごしたあとリンゼイを待っていたのは、残された視察の予定をこなすのと、提出しなければならない論文に追われる日々だった。


 毎日へとへとになるくらい忙しく、夜は泥のように眠る日が続いたが、常に念頭にあったのはジョシュアのことだ。


 リンゼイが忙しくしている間にレオナルドが貴族たちと連絡をつけ、ジョシュアのことを頼みに行っていたようだが、今のところいい返事をもらった報せを受けていない。


 レオナルドは養子先がかち合うのを避け、一人ずつ手紙を送り、返答をもらってから次の貴族に手紙を送っているようで、事情や理由は解るのだが、リンゼイは焦らずにはいられなかった。


 そうこうしているうちに帰国するまであと二週間となってしまった。


 



「学校も静かになりましたね」


 長期休暇前の今、王都国立学校に通う学生たちは卒業をしていく者や、すでに社交界シーズンに備え、新しいドレスや盛服の準備に勤しむ者などが増え、校舎や敷地で見かける学生が随分と減ってしまった。


 リンゼイは帰国間際まで通うことになっており、それに付き合うレオナルドと静かな敷地を歩いていた。


 だが考え事をしていたせいで、レオナルドに話しかけられたのにもやや反応が遅れる。


「え……? あ、そうですね」


 賑わいがないのもあり、気鬱さが一層増し、リンゼイは覇気のない声で答えた。





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