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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう




「リンゼイはこのカンターヌを憂いて躊躇っているのね。でもあなたが……いえ、あなたの心まで国の犠牲にする必要なんてないのよ。自分に正直になって」


 答えあぐねるリンゼイに姉が優しく語りかける。


(自分に正直に……)


 姉の言葉を反芻し心を探ると、そこにあったのは強い想いだった。


「私……やっぱりあの方にこの身を捧げたいです」


 何年もジョシュアを想い続けてきた。過ごした時間は短く、交わした言葉も数えるほど。なのになぜだろうか。彼がどうしようもなく恋しい。


 大人になり結婚する意味を真の意味を知り、ジョシュア以外に純潔を捧げるのはどうしても嫌だ。他の男に処女を散らされる恐怖を思えば、それ以上に怖いことなどないようにも思えてくる。


「それでいいのよ、リンゼイ」


 王女としては間違った選択だとしても、一人の女としては正解だとばかりに姉は頷く。


「この秘薬は最終手段。どうしても必要なときに使いなさい。まずはあなたの心が届くように努力なさい」


「はい」


「あとのことは私とお兄さまに任せて。私たちは今までもこれからもリンゼイの味方よ。なにがあっても全力であなたを守るから。だからリンゼイは自分の決めた道を真っ直ぐ進みなさい。いいわね」


「はい……ありがとうございます、お姉さま」


 姉の言葉、そして兄の協力に背中を押されたリンゼイ。これ以上迷っていては彼らの気持ちに失礼だと心を決めた。


 リンゼイの手の中には使うかどうかは解らないが、ラベンダー色の小瓶が握られていた。







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