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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう




「あの……お姉さま。そうではなくて……。まさかこれをあの方に使えとおっしゃるの?」


「……リンゼイは想う方と契りを結びたいと言ったわね? その気持ちは今も変わらない?」


 尋ねられ、一瞬戸惑う。あの時は勢いで言ってしまったものの、その気持ちに嘘はなかった。


 だがラインハルトへ行けることになり、その目的が父母の手前真実を言えず、騙す形で遂げることになってしまった。その罪悪感は日に日に募り、この先一生抱えることになるだろう。


 こじつけの理由を考えたのは姉や兄であるが、偏にリンゼイを思ってのことだ。彼らに罪を負わせるつもりはない。すべてはリンゼイが決め、リンゼイの意志ですることだ。


 リンゼイは固く瞼を閉じ、記憶の中にあるジョシュアの姿を思い浮かべた。


 気品ある精悍な容姿、甘く低い声。階段から落ちるリンゼイを受け止めてくれた逞しい腕。そして滅多に見られなかった、自分だけに向けられた優しい笑顔。


 何年経っても色褪せず、刻まれているジョシュアとの思い出。


 彼への想いを秘め、このままスチュワートと結婚することがカンターヌ王家にとって正しい道だと解っている。けれどリンゼイにとっては生涯後悔するだろう道だとも解っていた。





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