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王女様の不埒な暴走
第3章 恋、煩わせる
カンターヌ王家の紋章が刻まれる立派な2頭引きの馬車。大人が何人も乗れそうな馬車の中は、長旅でも疲れないようにしつらえられている。
座椅子は適度な弾力があり、その上にはいくつものクッションが並んでいる。窓部分は斜光のカーテンが引かれ、うたた寝するにしても十分に心地良いだろう。
その馬車の前後は大仰なほどの護衛がつき、さらに一行に先行して偵察を送ってもいるらしい。
一国の末姫の旅にしてはあまりにも仰々しいが、国の威信を他国に見せつける名目もあるのだろう、と馬車に乗り込むリンゼイは小さくため息を吐いた。
「国王陛下、王妃殿下。行って参ります」
臣下の目がある前では父母と言えど国の長への礼儀を尽くさなくてはならず、リンゼイは見送る両親へ膝を折ってドレスの裾を広げて挨拶をする。
「うむ。くれぐれも我が王家の名に恥じぬよう振る舞いなさい」
「身体に気を付けて行ってらっしゃい」
それぞれから言葉を贈られ、リンゼイは一揖してからいよいよ馬車に乗り込んだ。
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