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理想と偽装の向こう側
第7章 利用と束縛
顔を洗ってラフな格好に着替えて、ポカリも飲んでリビングに戻る。 


小田切さんはエプロンを外して、テーブルには軽めの昼食が用意されていた。


「落ち着いた?」


「小田切さんも結構飲んでたのに…なんでそんな元気なんですか…?」


まだ胸焼けがして、ローテンションで言ってしまう。


「そう?体質かな。」 


そうですか…。


「香織ん、今日どうするの?」


「特に…何もないです。いただきます…」


正直、なにもする気が起きないです…。


「そっ」 


小田切さんが作った、お粥を少し食べたら落ち着いてきた。


それから午後は、二人でソファーに寄っ掛かりながらテレビを観て、たわい無く時間を過ごす。


時間がもったいない様で、貴重な一時…。


凄い穏やかだ。


こうゆう過ごし方も嫌じゃない。


嘉之とは望んでも絶対に出来なかったし、この先も起こり得ないことだっただろう。


そんな体験を全部、小田切さんがこの1ヶ月で叶えてくれた。 


このままでいったら、嘉之と過ごした六年間の内の数日なんて、あっという間に塗り替えられる。


小田切さんと、過ごす日々の方が、比重が増してくる…。


私の心もそうなっていってしまうんじゃなかろうか…。


でも私たちの関係は、『傷の舐め合い』でしか、成り立ってない。


それ以上、それ以下でもない。


お互いの傷が癒されたら、どうなるんだろう…。

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