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理想と偽装の向こう側
第7章 利用と束縛
「結構、好きです…こうゆう過ごし方…。」


「ん?」


「こんな、何の気なしにテレビみたり、料理作りあったり、勢いたけで飲んだり…」


「ははっ!確かに昨日は飲み過ぎちゃったね」


今さら格好つけてもしょうがない…次々と言葉が走り出した。


「嘉之とは…全然、こんなこと出来なかった…」


「…彼?」


「はい…会うだけで、いっぱいいっぱい。ただ嘉之の話し聞いて…機嫌とって…ははは…何だったんだろう~」


笑えてきた…。


嘉之と出会って過ごした六年間。
ただ嘉之を励まし続けて、背中押してるだけだった。


「向き合うなんて…してなかった…」


同じ方向、同じ目的…
場所が違えど…

見詰めてる処が一緒なら、心も繋がっていけると信じていた。


私は、小田切さんの方を身体を向けた。 


「ん?」


小田切さんは、首を傾げながら私に向き合った。


「…こんな風に…全然向き合えてなかったんですよね」


「そうなの?」


「向き合いたいから話をしたくても、いつも…誤魔化されてて…『香織なら俺の気持ちわかるよな』その一言で無駄なプライドで見栄張って…本当に情けないですよね」


「………」


こんな話を黙って聞いてくれてる。


「でも…小田切さんと、出会って…割りと毎日楽しくて」


「割りと?」


クスッと小田切さんが、微笑む。

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