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理想と偽装の向こう側
第7章 利用と束縛
ドクンッ…鉛でも落ちてきた感覚が襲った。


「渡辺さんならトランスさん顔パス利くから、向こうも助かるみたいで。ちょっと至急でご免なさいね。直帰していいから」


井関さんは、優しく笑った。


「直帰して、いいんですか!それは、ラッキーです」


「ははは!月曜日に仕事溜めないようにね!宜しく!」


「はいっ!」


今日早く帰れるのは、正直嬉しかった…その反面、不安もあったが…。


大丈夫…アイツに会う可能性の方が低い、調べたら嘉之とは関係がない展示会だし。


売れ出した時は、アチコチ顔を出して人脈を広げてたが、今や嘉之はトランスの顔になりつつある。


易々、出てこなくなった。


忙しさも増して、私に連絡だって寄越してこなかったし…。

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