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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
◎ ◎ ◎ ◎

駅に着くと嘉之が改札近くの壁に寄りかかりながら、電話をしていた。


「はい…分かりました。来週ですね…はい…」


今までに聞いたこと無い様な、丁寧な受け答えをしている。 


仕事かな…。


そんな姿が、妙に嬉しく思えた。


「では、失礼します」


通話が終わり、携帯のボタンを押す。


「お疲れ様~」

「よう!」


そう言って、少し笑う。


半年前くらいはそれだけでドキドキだったが、今は穏やかな気持ちで充満する。


「新居、駅から近いの?」


「歩きで20分くらいかな。駐車場やスーパーも近くにあるから結構便利だよ」


「良かったね!」


「まだ全然片付いてないけどな」


片付けると言っても、荷物は画材ぐらいだろう。


「何か作ろうか?」


「今日はいいわ。スーパーで適当に買ってこ」


新居に向かう手前にスーパーがあった。
飲み物と、お惣菜を少し買っていく。


新しく住まいは以前のアパートより、しっかりした作りの賃貸マイションだった。


「へえ~凄いね」


「ギャラリストから家賃半分出るからね」


その言葉に、画商が付いたことの有り難さを実感した。


トランス様々だ!

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