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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
ガチャリ…

鍵を開け中に入ると確かにまだ雑然としているが、3Kの間取りで解放感があり広々としている。


「凄~い!広いね!」


やっぱり、部屋は狭いより広い方がいいな!


「前よりはね」


「あっ!ソファーもある!」 


私がはしゃぐと


「珍しくないだろ?」


嘉之は、一言アッサリ言う。


「だって…何かオシャレで、らしくない」


前なんか、パイプベッドしかなかったじゃん!
言わないけどさ…。


「あんだよ、それ」


笑いながら、私の頭にビールを乗せてきた。


キュンっ!


「飲むべ」

「うん!」


栓を開け、缶を軽く持上げ


「お疲れ様~!」

「お疲れ~」


ビールが余り好きじゃない嘉之は、チューハイを飲みながら近況を話し始めた。


毎回このパターンだが、疲れもあるのかいつもの饒舌さはない。

 
話してる横顔も、若干やつれて見える。


「トランスポートがさ本当にいいところで、かなり自由を効かせてくれてさ」


「へぇ~それは、凄いね!」


画商は、アーティストの作品の売買の仲介をしてくれるが、その分売れるモノを描かそうと口出ししてくる場合もある。


色々調べてトランスポートは画商としてはまだ浅いが、アーティストの個性を活かしてくれると確信はあったのだ。 


私が仕事で、嘉之を推薦したことは、敢えて伏せていた。 


心強い後ろ楯はアーティストには、大事だから本当に良かった…。

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