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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
嘉之は、苦い顔して梶さんに振り向いた。


「ご迷惑を…お掛けしました…」


「また、今度ゆっくり話そう。仕事でも会うから」


「はい…」


梶さんは、私に笑顔を向けて個室に戻って行った。


見事だ!
梶様、お見事過ぎます!
水戸黄門様でしょうか!


はっ!イカン!我に返らねば


「嘉之…あのさ…」


「今日、来て…駅で待ってる…」


何か凄い声が、強ばって聞こえる…。


明日も仕事だけど、ほっとく訳にはいかないし…。


「うん…終わったら向かうね…」

「………」


嘉之は、黙って頷いて戻って行った…。


最近、更に情緒不安定だったけど今日は酷いな…。


『会社でも誰か仲いい奴…』
って、いきなりなんだろう…
今まで聞かれたこともないのに…。


梶さんが居てくれて、助かった。


無事に終わるのをただただ、願うばかりだった。


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