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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「嘉之…大好き…」



クスッと笑いながら、



「どうしたの?今日変だよ香織」



「そうかな…いつも言ってるよ」



「まあな」



やっぱり『好きだよ。』は貰えないんだね…。



「キス…して…」


「香織…?」


自分から嘉之の唇に重ねた。


触れるだけのキスを啄むように、何度もする…。


言葉がないなら、少しでも触れていたかった。


「香…織…」


両手で私の顔を挟み、唇を割って舌が深く入ってきた。 

優しく、口の中をかき回し私の舌を絡め取る。


「あっ…は…ふっ…」

こんなに激しくキスしてても、元木さんの言葉が頭をかすめて胸がザワつく。


両腕を嘉之の首に回し強く抱き締める。


何も考えられないくらい、メチャメチャにして欲しかった。


嘉之が唇を離した。


「香織…今日、大丈夫そう?」 


体調を気にしてくれてるんだ…

静かに頷くと


「行こ…」


私たちは、寝室に向かった。

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