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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「ブルブルブル…」


携帯のバイブレーションが響く…。


「はっ…でん…」


そう言っても嘉之は執拗に唇を重ねたまま、私に覆い被さっている。


貧血が起こり、正直吐きたい気分だ。


私の様子も無視して、気が済むまで続ける気なんだろう。


「ブルブルブル…」


再度、着信が入り渾身込めて叫ぶ。


「ん~!ん~!!電話っ!」


「…たくっ!誰だよ」


嘉之はようやく観念して、苛立ちを抑えぬまま携帯を手に取った。


「はい!…あぁ…兄貴かよ」


お兄さん?
そういえば三歳年上のお兄さんがいると言ってたな…。
とりあえず助かった…。


身体を起こそうとしたが、なかなか動けなかった。


クラクラして息をするのもやっとだ…。

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