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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
「では、次の時にはサンプルをお見せしますので、また連絡しますね」


「分かりました!楽しみにしています。な!須永くん」


辻さんは、満面の笑顔で嘉之に話しかける。


「はい」


嘉之は穏やかに笑って返事をしたが、その奥底を考えると怖さを感じてしまう。


「じゃあ、僕たちはこれで失礼します」


辻さんが、部屋を出ようとした時だった。


「辻さん!自分、渡辺さんと少し話して帰っていいですか?素材とか知りたいので」


「え…渡辺さん、いいでしょうか」


「少しだけなら…時間ありますから、大丈夫ですよ」


…そうきたか。


「すみません!では、僕は先に失礼します!須永くん、後で連絡下さいね!」


「はい。分かりました」


辻さんは、申し訳なさそうに出ていった。


二人だかになったミーティングルームに、沈黙だけが漂う。

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