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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
その途端、抱き締める腕に力が入った。


「嘉之…」


「でも、今こうしてるからいいや」


「…つっ!」


更に力を入るられ、ちょっと痛かった。


「香織…」


「な…に…」


「裏切るなよ…」


「えっ…」


私の戸惑った顔に、妖しげな笑みをこぼしながら


「ずっと…俺のこと見てるんだろ?」


「嘉…」


真綿どころか、蜘蛛の糸だ…

もがけばもがく程、確実に相手の思うツボになる。


固まってる私の顔に、嘉之の頭が覆い被さり、唇を吸われる…。


クチュクチュと響く音が、まるで餌でも食べてるかの様に思えた。


蜘蛛が巣に掛かった虫を食べる時ってどんななんだろう…。


ねぇ…嘉之にとって、私はなんなの?


その一言が聞けたら、答えがもらえたら…

楽になれるのかな…。


「んっ…嘉…ゆ…き…」


疲れも手伝って、そのまま眠りに吸い込まれていった。

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