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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
朝ごはんを済ませてコーヒーを飲もうとブラックで自分の分と、嘉之は苦いのが苦手だから甘めのカフェオレにする。


「はい…」


「サンキュー!」


沈黙…。


基本的には嘉之がしゃべり倒してるから、嘉之が話さないと静かだな…
と、思っていたら、しゃべり出した。


「香織…今日から泊まりに来なよ」


『来れる?』じゃなく、決定なんだな…。


「個展準備…忙しいんじゃないの?」


「個展?来年かな~ポチポチ準備はしてるけど」


「そうなんだ…分かった…」


元木さんには、忙しい言ってたのに…。


泊まりか…
無視は、また昨日みたいなことやらかすから、もう出来ないしな…
本当に手段を選ばないよね…。


片付けをして、出勤しようと玄関に向かいながら、 


「あっ…嘉之、タオルとゴミありがとう…」


一応お礼言わないと思ったら、嘉之は笑いながら、


「あぁ~それにしても凄い泣いたんだ。ティッシュ一箱半使ってるんだもんな」


楽しそうに話す。


くっ!誰のせいだと…。


「ゴメンね…買ってくるよ」


「別にティッシュくらいいいよ。今晩は、別の意味で鳴くかもしれないけどね」


意味深で不敵に笑う嘉之に、朝から目眩が起きそうだった。

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