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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
「上カルビきた~!」


脂が多いから、網に載せると一瞬火が燃え上がる。


「おっと!」


「大丈夫!?」


嘉之はニカッと笑い


「大丈夫~焼き肉奉行に任せとけって!」


それから、カルビを焼き始めた姿が余りに真剣だから、可笑しくなってしまう。


「くすっ…」


「なに笑ってんの!」


笑顔で聞き返してくるからビールを飲みながら私は


「マジ過ぎ」


「焼き肉は常に真剣じゃないと!」


「なにそれ!」


「いいから、ほら食べ頃」


最初の一枚を私のお皿に載せ


「食ってみ!」


「うん……美味しい!」


「だろっ!」


嘉之の方がご満悦な顔をする。


怖いくらい…ちょっと幸福感を感じる…
過敏になり過ぎてたのかな…。


食事を進めていくと、 


「香織のところの家具とか、社割り利くの?」


「うん…少しは、モノにもよるけど、何か欲しいの?」


「あぁ…ベッド…広くてしっかりしたの欲しくね?」


「えっ?」


逆に聞くのか!


「今のパイプかなり古いから最近軋み激しいだろ、うるさいし狭いし…あれ香織…顔赤いよ。何考えたの?」


ニヤッて笑って意地悪い。


「赤くないし、何も考えてないし!」


「ふ~ん…セミダブルくらいは欲しよな」


「分かった!カタログ探しておくね!」


なんで、同意を求めてくるかな!


嘉之の口元は、やはり不敵に笑っていた。


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