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理想と偽装の向こう側
第11章 亀裂
「な、何っ!」


ボケッとしてたから一瞬驚いたが、嘉之は気にもせず長い指を使って顔の輪郭をそっとなぞる。


ゾクッとする感覚が身体を走り目を細めると、嘉之の親指が唇を割ってきた。


「あっ…」


親指の腹で唇をなぞる感覚が背中をゾクゾクとさせ、思わず目を瞑る…

嘉之は真横に顔を傾け一気に唇を塞いだ。


「んっ!」


嘉之の舌が私の歯茎をなぞっていき、舌を根っこから絡め取ろうとする。


「はぁ…ふっ…」


こうなるとされるがままになる。

 
私は、肩を抱く嘉之の左腕を両手で掴んでいた。


顎を持っていた右手が私の頭に回り嘉之の顔に押しあてられ、鼻まで塞がれ口の中は激しい掻き回され、息が出来なくてクラクラしてくる。


「んっ!んっ!」


息させて!


嘉之はやっと離してくれ、一気に息を吸い込んだ。


「はっ…苦し…」


「香織…」


「はぁ…なに?」


嘉之は両腕で再度私を抱き締めて耳元で、恐ろしいくらい優しく囁いた。


「寝かせないから…覚悟しろよ…」

「!!!」


あぁ…やっぱり…。


一気にザワザワとしたモノが吹き出し、恐怖心に乗っ取られていった…。

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