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理想と偽装の向こう側
第12章 板ばさみ
二人でエレベーターに乗り、地下の駐車場に降りる。


そこで改めて思い返す…
一瞬気が緩んだが、本当に送ってくれるのかな…。


や、ヤバい…
先週あんな状況だったのに、今日も何かあるかもしれない!


「嘉之…私やっぱり電車で…」


「あれなんだ、車」


嘉之が指差した先には、レトログリーンのニュービートルが停まっていた。


「可愛いっ!」


「だろ!」


嘉之はめっちゃ嬉しそうに笑った。


「ニュービートル欲しがってたもんね!高かったんじゃない?」


「いや…中古だから俺でも買えた」


「へぇ~凄~い!」


なんやかんやで嘉之って叶えたいこと、コツコツ達成させてるよな…
入賞にしても海外進出も、このニュービートルも…。


「頑張ったんだね…」


「まぁね」


照れくさそうに笑う嘉之を見て、私の中で嬉しさと罪悪感が混ざる。


嘉之は…
ただ自分に正直なだけなんだよね…。


「乗りなよ」


「あっうん、ありがとう!」


私はニュービートルに警戒心をすっかり、吹っ飛ばされていた。

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