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理想と偽装の向こう側
第5章 トラウマ
「じゃあ、あれは彼からもらったの?」


額縁の山を指差す小田切さん。


「……いえ…買いました」


ズズズ…


コーヒーを啜る音が響く。
嫌な間だな…。


「そっか…香織んさあ…」


「はい…」


「夕飯どうする?」


「はい?!」


え!この流れで夕飯ですか!!


「昨日は飲んだから軽めがいいかな~。引っ越し祝いも兼ねて、パぁーといきたい気もするけど、香織んお腹空いてる?」 


「そう言えば…お昼食べてないかも…」


そう言った途端…
ギュルルル~とお腹が鳴った。


小田切さんは、一瞬キョトンとしてから吹き出した。


「香織ん!どんだけ必死に掃除してたの!」


「はぁ~。思いの外、一心不乱に…」


自身でもどんたけだよ!とツッコミ入れてしまう!


「よしっ!肉食おう!焼き肉行こう!!」


小田切さんは、コーヒーを飲み干しカップを洗おうとした。 


「あっ!やりますよ!」


「有り難う~!ご馳走さま。俺、先に入り口に車に回しとくね」


そう言い残し、笑顔で出て行った。


「はぁ~」


小田切さんの見事なツッコミと切り替えぶりに慌ててしまう。


でも、当時だったらただ悩んでいたことが、話していると遠い過去の様な気もしてくる。 


消化不良を少しずつ少しずつ噛み砕いて、消化していく…そんな感覚なんだろうか…。


そしたら、いつかスッキリとするだろうか…。


嘉之の作品の山を見詰めた。


今でも頑張って欲しいと思う…

もっと世間に知ってもらいたいと思う…

幸せになって欲しいと思う…

じゃないと…


私の自尊心がもたない…


そんなちっぽけな…プライド…。

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