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理想と偽装の向こう側
第14章 時限爆弾
603号室

小田切さんの部屋の前に立って、意を決する。


「コンコン!」


これだけで、心臓が飛び出しそう。


「はい…香織ん?」


やっぱり解るか…嬉しい…。


「はい…」


「カチャ」


ドアが開けてもらうと、小田切さんもパジャマになっていた。


「どうした?」


微笑みながら聞いてくれる。


「眠れなくて…」


ゴクリ…ツバを飲み込む。


「寝れないか…何か飲む?」


「う…うん!」


「入って~」


「お邪魔します…」


おずおずと入ると、小さいテーブルの上にビールの缶が置いてある。


一人で飲んでたのね。


小田切さんは、冷蔵庫を開けながら


「ビールがいい?チューハイもあるよ」


「へぇ~!今どきのホテルは、何でも揃ってるんですね!」


「ん…ああ…買っておいたからね」


「へ?」


「一回チェックインしに来てるんだよね。そん時、買って入れておいた」


小田切さん…
どうなるか分からなかったのに、ここに連れて来てくれる思いでいたんだ。


ジ~ンと、胸の奥が熱くなる。


「ビールで…」


「はい!どうぞ~」

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