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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「名前、決めたんですか?」


「それが…迷ってね」


チラリと奥さんが滝島を見ると


「だって!大事な一人娘の一生が懸かってるのに、簡単には決められないだろ!」


「でも期日があるから。そうだ!小田切さんに選んでもらおうかしら!」


「えっ!俺?」


「何っ!!小田切に?」


奥さんは、サイドボードから、紙を取り出した。


「国彦さんがね選んだんだけど…この中から小田切さんの直感に任せるわ!」


「本気ですか…」


紙には五十音順に無数の名前が書かれていた。


滝島の思いが伝わってくる分、こんな重大なこと安易に引き受けられない。 


案の定、滝島は


「娘の名前を呼ぶ度に、小田切のことが思い浮かぶじゃないか~!!」


と叫ぶのに反し奥さんは


「あら別にいいわよ。この子も小田切さんなら喜ぶわ!ほら嬉しそうよ」


滝島が涙目で俺を見る。


「小田切ぃ~!」

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