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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「キッ…!!」


明らかに固まったのが分かるが、言った手前退きたくはない。

 
俺は水越さんの耳もで小さく囁いた。


「眼…瞑って…」


「ひゃ…あ、あの…」


水越さんがあたふたしてる間に俺は彼女の額、瞼や頬に軽く触れていく。


その度に


「ひゃ!きゃ!」


身体をびくびくさせて反応する彼女が、可愛くて思わず何度も触れたくなる。


「水越さん…」 


「はいっ!!」


名前言っただけでこの反応だ、もしかして…

聞くのも何だけど…


「こうゆうこと…余りしたことない?」


予想通り


「はい!」


そっか…
相手も奥手だったのかな…

と思いきや


「私、誰ともお付き合いしたことなくて!」


え…それは、流石に予想外!


「え…ホント…?」


「色々忙しくて…何かタイミングとかなくて…」


野郎どもは、さぞかし指を加えて狙ってただろうに。


俺は彼女の顎に手を添えて、親指で薄く小さな唇に触れる


「初めて…?」

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