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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「初めて…じゃないです」


ガックシッ!
キスくらいは、あるか…
うっかり落ちこんじゃったよ…。


「そっ…羨ましいね…そいつ」


なんて…言ってみたら


「小学生の時に後ろの席に座った潤くんが、からかい半分でプリント渡した時に、軽くチュッて!感じで…」


へ…小学生?


「何年生…?」


よもやどうでもいい事なのに、話の流で聞いてしまった。


「さ…三年生かな…」


「へぇ~…子供のイタズラだから、カウントしないでいいんじゃない?」


ジュン…覚えてろよ!


一生会うことなかろう相手の子供の頃のイタズラに、軽く嫉妬してしまう。


「そ、そうですか!その後は…誰ともなくて…25歳にもなって…恥ずかしいですよね…」


ヤバい…
照れながらモジモジ話す姿に、かなりトキメイてしまう。


「いや…結構いるんじゃないかな?恥ずかしい事じゃないでしょ。色々頑張ってきて忙しかったんでしょ?」


「はい…勉強や家事とかしてて…それだけで、いっぱいいっぱいでした…」


そうでもなければ、野郎どもが水越さんをほっとく訳はなかろうからな…。

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