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理想と偽装の向こう側
第6章 予測不可能
黎子と別れて駅からの帰り道、小田切さんと出会った橋の上を通り掛かり、立ち止まった。


街灯か余りなく暗がりの中、川の水面は月明かりを反射させている。


その水面をボンヤリ眺めながら思い返す。


生まれて初めて、死にたいと思ったくらい辛かったのが、たった一週間前なのがウソのようだ。 


嘉之とあった出来事を一つ一つ鮮明に脳裏に蘇らせる。


そうすると、未だに胸の奥が締め付けられる感覚。


甘ったれなところ。
自己中なところ。
寂しがりなところ…。


そんなところも許せるくらい大好きだった…。


何より、子供の様な無邪気な笑顔が堪らなく好きだった…。


この人の為に、命を掛けても惜しくないと、本当に思っていた…。


川上から風が静かに吹いて、髪が頬を掠める。


気まぐれにきた、電話とメール。
嘉之の気分次第で重ねた、唇と肌…。


嘉之の無邪気さに、振り回される様になっても…なんとか受け止めていけると、自分を奮い立たせてた。


そう…あの娘が現れるまでは…。


幻想を現実に摩り替えることが、出来ていた。


負の感情が、一気に押し寄せる…。
頭の天辺から、砂が落ちてくる感覚…。


グラッと目眩がして、橋の縁に手を突いた。


息苦しい…。


ここ一年、思い出すとこの症状に陥ってしまうのに、敢えて考えてる自分がいる。 


どこで違えたのか、何が正しかったのか、今更考えても無駄なのに…。


自身を納得させたくて、繰り返す…。

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