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理想と偽装の向こう側
第20章 さよなら
安岡さんは私に優しく微笑んでから


「渡辺さんは…整った環境をおまえに与えてやりたかったから、一生懸命してくれた。でも、おまえから一番望んでたのはステータスじゃない」


「…分かってるよ」


嘉之は、気不味い顔になる。


「本当に?じゃあ言ってやれば良かったろ!たった一言『好きだ』って!いつまで過去のトラウマ引き摺ってんだよ!」


「それも分かっ てんだろが!」


怒鳴る嘉之に、安岡さんも負けじと言い返す。


「嘉之、逃げるな!」


「煩いっ!分かったよ!二人とも出てけよ!」


嘉之は、苦しそうに眼を閉じて叫ぶ。


「とりあえず今日は、帰る…渡辺さん途中まで、送るね」


「あっ…」


私は嘉之を見ながら、小田切さんに関する書類が気になった。


嘉之は、それに気付いてか


「持って行けば…どうせ、企画が通ればケリ付くし…」

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