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理想と偽装の向こう側
第6章 予測不可能
◎ ◎ ◎ ◎

「では三人の出逢いに!乾杯っ!」
「乾杯…です」
「………」


滝島さんの声で、居酒屋にいる現実に引き戻される。


あの後、小田切さんと最初に飲みに来た居酒屋に入ることになった。


「あんだよ、小田切。渡辺さんと二人きりになりたいのは分かるけど、そんなにブータレるなよ」


「嫁さん待ってるだろ。いいのかよ?心配してるんだよ」

「嘘だね!嫁さんに連絡してあるから大丈夫ぅ~!『楽しんで来て、小田切さんに宜しくね!』って、出来た嫁さんだろ!」


「あぁ…滝島には、本当に勿体ないくらい、出来た嫁さんだよな」


「聞いた?渡辺さん!いつも俺にツレないんだよ!何か言ってやってよ!」


この素人漫才にツッコめと言うのか…。


「滝島さん…これは小田切さんなりの愛情表現かと…」


その瞬間、二人が固まる。
あれ?ちょっと腐女子テイストだったかな。 


「渡辺さんキテるね…」


「香織ん、そっち好き?」


「えっ!小田切、今なんて言ったの!?渡辺さんを香織んって呼んでるの!」


「うるさいなぁ!なんて呼ぼうと俺の勝手だろ!」


「照れてる!照れてるぅ~!渡辺さんは、なんて呼ぶの?」


「えっ!私は『小田切さん』ですよ」


「普通だね。志信ぅ~とか、信リンとかで呼んでやって!喜ぶから!」


「喜ばねぇよ!」


信リン…ないな…。


「だから、お前が絡むと嫌な予感するんだよ。ほら、携帯鳴ってるぞ!」


「あっ!マジっ?嫁さんだ!何かあったかな?ちょっと出てくるわ」


そう言って電話をしに、席を離れる滝島さんを眺めながら


「滝島さん、面白いですよね」


「香織ん!」


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