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異世界のイケメンに脱童貞させてくれとお願いされている
第1章 壁に穴が空いた
珍しく残業もなかった金曜の夜、わたしは家で缶チューハイを空けていた。同じくスーパーで買ってきた惣菜のポテトサラダを割り箸でつまむ。ローテーブルのパソコンに映っているのは、ホラーゲームの実況動画だ。
テレビも見られるパソコンだったが、そちらの機能は一度も使ったことがない。仕事で疲れた脳には、淡々と同じペースでゲームの解説をしてくれる実況者の声がちょうど良かった。テレビのバラエティは賑やかすぎるし、ドラマは集中力が必要だ。ニュースなんか見ても、仕事以外で怒ったり悲しんだりする余裕はない。
部屋の中ではエアコンが乾燥した熱風を吐き出していた。加湿器はカルキが溜まったまま放置されている。お肌の曲がり角はとっくにすぎた三十路だというのに、オールインワンのスキンケアすら面倒くさい。
そういえばメイクも落としていなかった。寝落ちする前に風呂に入らなければ、と毎週のように思っては失敗している。スーツは肩が凝るから脱いだけども、シャツブラウスにジャージの上下という、人には見せられない服装だ。女子力が低すぎるというか、独り暮らし万歳というか。