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女子大生 成宮恵理
第8章 意識しちゃう
「……悠一郎君……」
横顔を見つめながら無意識の内に悠一郎の名を小さな声で呟いてしまった恵理。
言ってしまってから自分でハッとした。
「ん?なんか言った?」
「う、ううん!な、何でもないよ。」
恵理は顔を真っ赤にして慌ててそう返事をした。
部屋が薄暗いから恵理の顔色は分からなかったのだろう、悠一郎はそれを気にする事なく再び画面に目を向けた。
しかし恵理の胸の高鳴りは止まらなかった。
溶け始めた心がドキドキと熱くなっていく。
2人きりで、すぐ隣に悠一郎がいる。恵理はその状況を再認識した時、ある種の興奮を感じてしまっていた。
少し布団の中で手を伸ばせば悠一郎に触れる事ができる。
本当は悠一郎の方に傾けるようにして身を寄せたい。
悠一郎君と手を繋ぎたい。
ギュって抱きしめられたい。
もし悠一郎にそうされたら心が全部溶けきって、その中に詰まった苦しい想いを全部曝け出してしまうだろう。恵理自身、それは分かっていた。
だから心も身体も磁石のように悠一郎に引き寄せられるけれど、それをギリギリのところでなんとか我慢する恵理。
それは決してしてはいけない事だし、できない。
だって悠一郎君は奈々の彼氏なんだから。
これが〝友達〟としての限界の距離感。これ以上近づく事は恵理の方からはできない。