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女子大生 成宮恵理
第27章 帰ってきちゃった
「どうしよう……」


今この部屋の状況を奈々に見られたら、何も言い訳できない。

テーブルの上に並べられたお酒の空き缶、脱ぎ散らかされた衣服、使用済みコンドームの袋、部屋に微妙に漂っている男女の匂い。

そしてパンツ一枚の悠一郎と、髪が濡れたままの恵理。


「やっべぇな……とりあえず裸はまずいよな、俺の服、あれ服どこいった?ここか」


「どうしよう……どうしよう……」


パニックになっている恵理はその言葉を繰り返すだけで、ただその場に立ち尽くしてしまっている。

悠一郎は慌てて服を着ると、何かを探すように部屋を見渡した。


「とりあえず俺は隠れるわ。」


クローゼットの方を指さし、そう言い放った悠一郎。

もちろんその表情に余裕はない。


「隠れるって、そんな事言われても……私どうしたら。」


「とにかく奈々を部屋に入れないようにして、あっ、ていうか居留守すればいいのか。」


そう、ただその場で黙ってさえいれば奈々は恵理が居ないと思って自分の部屋へ去っていくだろう。

しかし次の瞬間、その居留守作戦は簡単に崩れてしまう。


「恵理ぃ!居ないのかなぁ……あれ、鍵開いてるじゃん。」


ガチャっという音と共に玄関のドアが開く。


「……!?」


どうして鍵が!?

思わぬ事態にさらに混乱する恵理。


……そうだ、昨日悠一郎君を部屋に入れた時……


そう、恵理は鍵を掛け忘れていたのだ。


「恵理ぃ!居ないのぉ?お土産買ってきたから一緒に食べよ~。恵理の好きな餡子の甘いやつだよぉ。」


ドア越しではない、クリアな奈々の声が直接耳に届く。

奈々はあまり遠慮するような友達ではない。

隣同士の部屋を、まるで同居生活でもしているかのように気兼ねなく互いに出入りしていたような仲だった2人。

トイレに行って戻ってきたらテレビの前に座ってお菓子を食べてる奈々が居た。そんな事が少し前までは日常茶飯事だった。

だから奈々は鍵が開いてるのに返事がなければ、心配して恵理の部屋にそれ程抵抗を感じることなく入って来てしまうだろう。

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