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女子大生 成宮恵理
第29章 最低だよね
奈々が悠一郎に聞いた話によると、その女の子は悠一郎のアルバイト先の後輩で、最近入ってきた新人なのだそう。
最初、怒り口調で問い詰めた奈々に対して、悠一郎は申し訳なさそうに謝ってきた。
しかしその後悠一郎はあっさり別れの言葉を言ってきたという。
奈々としては本当はやり直したいという気持ちもあったのだが、最終的には浮気をしていた側の悠一郎にフラれてしまった。
だから奈々は悔しいわ悲しいわで涙が止まらないと。
普段どちらかと言えば気が強いタイプの奈々が、失恋に加えてこれだけプライドをズタズタにされれば、号泣してしまうのも仕方ない。
一方恵理にとってもそれはショックな事で、結局悠一郎という男はそういう人間だったのだという事実を受け止めざるを得なかった。
はじめから恋に落ちてはいけない相手だったんだ。私は遊ばれたんだと。
その夜、恵理と奈々はそのまま部屋で朝まで一緒に過ごした。
前半は2人で大泣き、後半は奈々が自分の部屋からお酒を持ってきてそれを2人で飲み明かした。
奈々は一緒に泣いてくれた恵理にありがとうと言いつつも、なんでそこまで恵理が泣いてるの?と少し笑いながら聞いてきたが、さすがにその場で本当の事は言えなかった。
泥酔した奈々は真夜中に大声で「悠一郎のバカヤロー!!」と叫んだり、やっぱり悲しすぎるとシクシク泣いたりして気持ちを乱高下させれていたけれど、翌日起きた頃には少しスッキリしたような表情を見せていた。
そんな奈々を見て、恵理も少し気持ちが軽くなったような気がしていた。
とても悲しいし自己嫌悪もするけれど、なんだか少し、どん底から救われたような、不思議な気分だった。
いつまでも引きずり続けていた恋心。
終わらせたくても終わらす事ができなくて、過ちも犯した。
でもこの日、恵理はその恋に終止符を打てたような気がしていたのだ。
悠一郎という男に向けて、心の中で〝さようなら〟と。