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あなたとふたり
第30章 アカリ

「優。」
突然、呼び声がした。
振り向くとそこにはアカリさんが
立っていた。
…聞き間違い?今、『優』って…
そう思っていると、すぐ隣から
気怠そうに声がした。
「会社でそう呼ぶのやめてもらえない?村崎さん。」
…何?
「あら。ごめんなさい。昔の癖で。」
フフッと少しだけ笑みをこぼすと
アカリさんは私を見た。
「あなたが優の宝物なのね。」
「やめろよ。」
…何?
何なの?
昔の癖?
宝物?
なんのこと?
私の顔は無意識にとても
不安そうな顔になっていたのか
優ちゃんが不意に覗き込む。
「お顔が腫れて見えるけど…
喧嘩でもした後かしら?」
「おいって…」
「遥香さん。これからよろしくね。
優。打ち合わせだから忘れないでね」
そう言って彼女はエレベーターへと乗り込んだ。
「……誰なの?」
やっと絞り出した一言はそれだった。

