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金の月銀の月
第5章 One and Only
璃子を送り出すと美枝子は身支度を始めた。

美枝子は3日分の着替えを持ち、旅行鞄を持った。
そして家を出た。

とりあえず家から出たかった。

旅行鞄を持ち一真の店の前を通りかかった。
まだ朝の5時半だ。辺りはまだ薄暗かった。

「きっとまだ寝ているわね。」

美枝子は店を見上げ、再び歩き出した。

すると喫茶店のドアが開いた音がした。
振り返ると一真が出てきた。

その後ろからあの遥が出て来て
一真の首に抱きつきキスをしていた。

美枝子の鞄を持つ手の力が抜けた。
鞄を思わず落としてしまった。

美枝子は咄嗟後ろを向いた。

二人は音に驚き美枝子の方を向いた。

美枝子は振り返らずに鞄を持ち上げ歩き出した。


「あ…やっぱり…」

涙が溢れてきた。

大人にならなくちゃ…
あんなの気にならなくならなくちゃ…
ちゃんと距離を作っておかなくちゃ


一真は遥を見送ると、美枝子を追って走ってきた。
美枝子は振り返らないように真っ直ぐ見て歩いていた。

「美枝子さん?美枝子?」
一真は美枝子の前に立った。


美枝子は涙を拭き凛とし
「あら、一真さん、早いのね。」
何も見ていなかったかのように話した。

「美枝子さん、どこに行くの?大きな荷物を抱えて。」
息を切らせながら一真は尋ねた。

「旅行よ?」

「旅行?どこに?」

「どこでもいいでしょ?」

「誰と?」

「誰とでもいいでしょ?あなたにいちいち言わないといけないかしら?」

「知りたいから。美枝子さんの事をしりたいんだよ。」

「あなたこそ、女性とラブラブで早朝にお見送り?」

「……。」

「遊びの女の行動なんていちいち把握しなくても、本命の彼女を大切にしなさいよ。」

一真は何も言えずにいた。

「じゃあ…」

美枝子が再び歩き出すと一真は美枝子の背後から抱き着いた。

「俺が好きなのは、美枝子だけだ!だから…」
耳元でそう囁いた。







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