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隠匿シリーズ☆番外編
第6章 彼の忘れられない人は……?
「良くないわよ。吐け! 吐きなさーい!」
「煩い。もうその話はやめだ、やめ」
「あー! そんなこと言って! あんた、見かけによらず思い出を大事に取っときたいタイプ? それとも言いたくないくらい、忘れられない人?」
「お前なぁ……」
レオの呆れる声を聴きつつ、アリエッタはよろよろと立ち上がる。
「アリエッタ?」
レオの呼びかけにアリエッタはシュンと項垂れ、呟くように言った。
「……ワイン取ってきます」
それだけ言い置き、リビングを出た。
長い廊下をトボトボと歩くアリエッタは、心を覆う靄が一層濃くなっていた。
アリエッタはレオしか知らないが、彼はそうじゃない。それは知ってはいたし、過去はどうあっても変えられないが、酔っているとはいえ、自分がいる前でそういった話題を出さなくてもいいじゃないかと思う。
それに、名を明るく告げてくれればいいものを、隠されると余計にセドリックが言っていたことが真実ではないかと疑ってしまう。心に秘めておきたいくらい大切な女性──本当にそうなのではないかと考えてしまうと、哀しくて仕方がない。
頭〈コウベ〉を垂れ、やはりトボトボと歩き、廊下の角を曲がろうとしたときだった。
「──え?」
ドン、と何かにぶつかり、視線を上げると、その上空がなぜか赤く染まった。
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