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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に
ジョシュアはキッシュが目許まで掲げた本に眼を留める。
「その本……ラインハルトの言語のものではないですね。いつから読めるようになったんです?」
「え? あぁ……いつからと言われても……。知らない間に?」
キッシュはそれがどれだけ大層なことか理解していないようで、本を眺めて首を傾げている。
「あなたは確か邸に来た当時、まともに読み書きすら出来ない状態でしたよね」
「そんなに酷くないですよ。最低限、文字くらいは読めました!」
キッシュは不満そうに口を尖らせる。
「だってレオ様が読め読め煩かったし、草木の勉強するのに他国語も必要だったから。ジョシュアさんだって知ってるじゃないですか。僕がここに連れて来られたとき、レオ様がスパルタで僕に勉強させてたのを」
「ああ、そうでしたね」
強引に、まるで拉致するかのようにキッシュを連れて来たレオ。彼はキッシュが貧困に喘ぐ生活をしてきたのを目の当たりにしており、学校にすら通えていなかったのも当然知っていて、無理矢理机に向かわせていたのだった。
キッシュは庭師として連れて来たのだから、庭仕事さえすればいいではないか、と散々文句を言っていた日々を思い出す。
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