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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に

馬車を降りると、いつものレオになる。
「皆、疲れただろ。一先ずはゆっくり休め」
レオは付き従った兵に笑顔で声をかけている。
その背を見て、ジョシュアは眼を細めずにはいられない。幼い彼が立派に育ったものだ、としみじみ感じ入る。
レオが常に悠然としているのは、王太子の立場をよく理解ているからだ。上に立つ者が悠然と構えていれば、おのずと下の者の心に余裕が生まれる。
それを解っているから、レオは他の者に弱った姿を見せない。
だが──。
「……なぁ、ジョシュア。この国のすべての者を救いたいと願うのは傲慢か?」
キッシュの村の隣の領地に宿を置き、領主の悪事を揃えることなどに奔走している最中。レオはふとそう漏らした。
「私はレオ様ならばその願いを叶えるのは可能だと思っております」
「なぜそう思う? 俺はまだ誰のことも救えていない。アリエッタだってまだ……」
「可能性をご自分で潰してはなりませんよ。“まだ”というならば、諦めない限りはいくらでも可能性は広がってます。それにお忘れかもしれませんが、レオ様は私のことを救ってくれたではないですか」
そう諭すと「そうだったな」と笑う。その笑顔は心許なかったが、琥珀色の双眸には光が失われずにいて、安堵を覚えた。
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