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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に

ジョシュアだけでなく周りには兵がいたからだろうか、平然と悪びれもせずに「戻ったぞ」と言ったレオの肩が、眼を凝らさねば見れないくらいの僅かさだったが、震えていたのだ。
レオが何を見てきたのか、想像に難くなかった。
馬車にレオと共に乗り込み、二人きりになると、彼は膝に肘をついて手の中に顔を埋める。
「レオ様……」
「あんな酷いことをよくも……!」
生気のない人間、無造作に転がる死体──まともな神経ならば直視出来ない光景を目の当たりにしてきただろうレオは、声を震わせる。
「なぜもっと早く気付けなかった……。なぜ間に合わなかったんだ……っ!」
レオは憤った声を発し、俯いたまま拳を膝に打ち付ける。その憤りは彼自身に向けたものだった。
かける言葉が見付からなかった。慰めの言葉など必要としていないのも解っていた。
それに怒りを見せているうちはまだ大丈夫だとも思えた。最も心配すべき点は、彼が感情を表に出さず、無気力になってしまうときだ。
レオの心が壊れかけてしまったときを思えば、怒りを滾らせているだけましだ。
だからと言って、ひとりで村に行かせてしまった自分の無能さと、見守るしかない無力さを感じずにはいられないが。
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