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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に




 ディランを下がらせたあと、それについて進言しなければ……と考えていると、ディランが生唾を呑む気配がした。


「その……」


 緊張した面持ちのディラン。咽頭が再び上下する。


「レオ様の…………臀部をひと撫でさせていただきたく……」


「却下」


 ディランの言葉を最後まで聞かず、レオは即座に言い放つ。


 執務室の空気が底冷えするほど下がった気がする。まるで氷の中に包まれているようだ。


 その原因はもちろんレオだ。彼の全身から冷気が漂っているのが見える。幻覚なのだろうが、ゆらゆらと彼の周囲の空気が揺れているような錯覚さえ覚えた。


「えぇっ!? いいじゃないですか! ほんのひと撫で……せめてひと突きくらい……」


 ディランはどうも察しが悪いらしく、食い下がる。


 それに対してレオはそれはそれは綺麗な笑顔で答えた。


「聞こえなかったのか? 却、下。ついでに昇格の件もここで言い渡す。……取り消しだ、ディラン。お前は永久にフットマンをやっておけ」


「そ、そんな……っ!? 酷いですよ!!」


「酷いのはどっちだ。誰が主人の尻を狙う奴を後ろに立たせると思うんだ!? もういい、お前は下がれ」


「で、でも……!」


「さ、が、れ」


 有無を言わせぬ声で、一言一句はっきりと発音し、レオはディランを強引に追い出した。





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