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隠匿シリーズ☆番外編
第2章 王子様の憂鬱
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翌日。アリエッタと祖母がキルト作りに励んでいる間、レオは母と近くの祖父が持つ果樹園に出掛けていた。
新しいお菓子作りの材料を仕入れるのに付き合わされているのだ。
赤い実をつけるリンゴの樹が整然と並び、甘酸っぱい匂いが立ち籠めている。
果樹園で従事する農夫にいくつか分けてもらい、ご満悦の母に切り出す。
「お爺さまから話は聞きました。言ってくだされば協力は惜しみませんでしたのに」
「なんのこと?」
「アリエッタのことですよ。連れ回したりせずとも、こちらに来る時間くらいつくります」
母は意外そうに瞳を瞬く。
「あら。私がアリエッタと一緒に居たかったのは事実よ? お父さまたちだけのためじゃないわ」
あっけらかんと言われ、レオが瞬く番だった。
「私ね。女の子がいたらやりたいこと、たーくさんあったのよ。お菓子作りもだけど、城下にお買い物も行きたいし、お茶の時間はいくらあっても足りないわ」
うっとりと語る母を前に、レオは脱力しそうになった。
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