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隠匿シリーズ☆番外編
第3章 ご主人様の裏の顔
──昔々、とある貴族の邸で働く娘がいた。
彼女は侍女にしておくのは勿体ないほど器量が良く、そして働き者だった。
そんな彼女と邸の次期当主である主の息子は恋に落ちた。身分差があり、誰にも明かすことのできない秘密の恋だ。
けれど彼女は幸せだった。隠れて逢瀬を重ねていても、慈しんでくれる彼がいるから。
しかしその幸せは長く続かなかった。彼に婚姻の話が舞い込んだのだ。彼は二人で逃げようと言ってくれた。
地位も名誉もいらない、キミだけがいてくれればいいから、と。
彼女は躊躇ったが、そうまで言ってくれる彼と逃げる決意をした矢先。彼が心変わりしてしまった。
相手の女性と逢ったのだ。とても美しく、気品に溢れる人で。
呆気なく、あっさりと彼女は捨てられた。
邸を追い出され、恋人にも捨てられ。
傷心の彼女はすべてに絶望し──冷たい川へと身を投げた。
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